2016-12-05から1日間の記事一覧

 4-4

どうしてわたしのギターのことを? という疑問は口にだされるまえに北川くんの言葉と顔の前で手をあわせてペコペコする、その必死な姿勢によって立ち消えになってしまった。 わたしは肩のストラップをはずして、北川くんへとギターをさしだした。北川くんは…

 4-3

★ 帰宅ラッシュのピークを過ぎた駅前は、閑散としていた。ロータリーには車の一台もなく、ときどき裏の道路を通り過ぎるエンジン音が聞こえるほかは、しずかなものだった。 高架下、円周がベンチになっているおおきなコンクリート柱のひとつのそばへ、自転車…

 4-2

――ごめんなさいね。口の利き方知らないクソガキで。 鉄槌をくだしたのは、ひょろょろと線の細い、髭もじゃのおじさんだった。エプロンの胸のところに、「店長 堀尾」というバッジをつけて、わたしとヨルとを交互に見やり、ニコニコとしている。もしかしたら…

【4.楽器屋さんの男の子の話と、北川くんのお誘い 】

4-1 中学生になったお祝いに、ギターはもらった。そのときはすでに離婚して離れて暮らすようになっていた、父に。 嬉しくて、すぐにヨルを招集し、楽器屋さんを探した。頭をつきつけて、いかにもぶあついタウンページをめくって。タウンページで実際に何かを…